面接・採用・解雇の要点

“人を雇う”ということ

以下を参考に個別案件についてはご相談ください。

 

「意味と関係性」

労働者:会社の利益に供するための適正な労務の提供義務
使用者:労務の提供に対する対価としての賃金支払い義務
労務提供>賃金?
労務提供<賃金?

「入口(採用)が肝心」~出口のトラブルは入口が原因~

その確認のための「雇用契約書」(労働条件通知書)
会社が求めるものの具体化(上記の詳細内容、付帯事項、覚書)
できなかったときの又はしようとしないときの対処の明示と確認誓約書(同上)

 

「プロセスも大事」

教育・指導
上記の事跡記録、始末書
配置転換等機会の付与

 

「出口は慎重に」

解雇の可能性の明示
解雇回避努力(丁寧な説明)
労使合同協議会による恣意的判断の排除
解雇予告通知書は具体的詳細に。
できれば合意退職に!

 

「雇止め・解雇の留意点」

○入口良ければ出口良し
○神(紙)のみぞ知る
○備えあれば憂いなし

 

【 はじめに 】
解雇とは、使用者がその労働契約を将来に亘って一方的に解除することです。
言うまでもなく、労働者にとってはその後の生活保障を喪失する重大な問題です。
したがって、普段のコミュニケーション→注意の喚起→指導・教育→始末書等記録の保存→配置転換→労使委員会での決定→弁明の機会などの「解雇回避努力」の手順を踏むなど慎重を期すことはもとより、できれば誠実に話し合い、『合意退職』にもっていくよう心掛けましょう。

 

【 一例 】
従業員で、仕事へのまじめな取り組みがなく、上司が指示した仕事も平気で断る。
リーダー社員が私傷病で怪我をして入院、会社にとって一番忙しい時期と分かっているにも拘らずしょっちゅう休む。社長が指示した仕事も「できません」と断る。
解雇したい。(上司も同意、同僚も支持)

 

1.期間の定めのない雇用契約者

 

【 解雇の成立要件 】

労働基準法上の手続き要件:30日以上前の『解雇予告通知(書)』または30日に対する不足分の平均賃金の支払い。(労働基準法)
民事上の正当性要件:客観的に合理的な解雇であり、社会通念上相当な事由の存在(労働契約法)

 
正当な解雇・労基法・労契法

 

【 就業規則 】
解雇(普通解雇、特に懲戒解雇)は会社によって同じ内容でもする場合としない場合があります。たとえばスピード違反で捕まるのは“道路交通法”に違反したからであり、たばこの禁止区域内行禁煙は“条例”に違反したから罰せられるわけです。
同じように解雇をするには解雇理由の根拠が必要です。
これを『罪刑法定主義』と言います。
必ずしも絶対的なものではありませんが、解雇の正当性を争うときには有力な“正当性”の補完要素になります。就業規則を見直してみましょう。(上記②の関係)

 

【 実務対応 】

会社の問題意識と本人の問題意識の強弱にずれがあることが一般的です。
まず、どのようなことで、そのために会社としてどのような不都合があり、このままでは会社としてどのような支障があるか。改善なくば、解雇やむなしの意思表示をきっちり本人に伝えましょう。
その際、相手の言い分もよく聞き、意志の疎通に心掛けましょう。
会社に多大な損害を与えるとか、何回注意しても無断欠勤するとか、犯罪行為を犯すとか、よほどの非違行為がなければ“懲戒解雇”は難しく、本件は“普通解雇”に該当すると思います。上記事例以外にも、会社としての懲戒事由、普通解雇事由を就業規則で規定することが肝要です。
したがっていきなり解雇はせず、粘り強く何回も注意をし、改善を促し、会社としては{いつ誰と、何人で、どのような内容の話をしたか、相手の言い分は}などの記録をつけ、それらを複数回続け、できるだけの“解雇回避努力”をしたのだけれど相手の対応がなかったとして、“やむなく解雇”という事跡を残してください。ケースバイケースですが、同僚等を同席させたり、意見を聞いたりすることもベターだと思います。
内容、程度にもよりますが、本件のようなケースは
・業務命令(労働契約から発生する使用者の権利)違反
・(労働)債務不完全履行(労働者の誠実な労務提供義務違反)
という問題でもあり、民事上も解雇可能の可能性が十分あると思料します。
なお、就業規則とは他に、手っ取り早く意識付けをするためと、解雇しやすくするための「継続雇用の要件(誓約書付・別紙)」をご参考に、経営理念、社風、過去の事例、その他総合的にご勘案して、効果のあるものにしてください。本紙は、採用時の『労働条件通知書』と一緒に交付することをイメージして作りましたが、「今の厳しい経済状況下で会社が生き残っていくため、なおいっそうの仕事への取り組みを!」として、あらためて全従業員に配布、訓令するのも良いと思います。

 

2.有期雇用契約者

 
【 はじめに 】
期間を定めて労働契約を締結した場合は、その期間を労使双方ともその“約束”に基づき、全うしなければならず、自分(又は会社)の都合で契約期間途中での解除は出来ません。

 

【 解雇の成立要件 】
解雇の正当性については期間を明示した上での契約であり、したがって期間の定めのない雇用契約より、厳格にその正当性を問われます。

 

上記①に同じ
契約解除するにやむを得ない事由があれば可能です。たとえば労働者側からすれば、傷病等により労務の提供が不能になったため、退職するとか、会社側からすれば、倒産したとかの客観的にやむを得ない事由が必要です。なおその場合に一方の過失に対して損害賠償の対象となることがあります。会社側の都合での解除の場合、残余期間の休業手当(労基法26条)か、民事上は賃金全額補償(民法536条2項)と損害賠償(慰謝料)請求の対象となる可能性があります。
実務的には契約期間まで在籍させて、罰則付きの強行法規である労働基準法に基づき、休業手当を支払うことが優先的に考えられますが、訴えられた場合、事由内容によっては上記の賃金全額補償になる可能性があります。

 

【 雇い止め・更新に係るルール (概要) 】
○ 有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準(労基法第14条第2項)の内容

更新の有無の明示(例)
・(自動的に)更新する。・・・雇用契約期間を定める意味が希薄になり、実質的な期間の定めのない雇用とみなされ、解雇権濫用の法理を類推適用される危険があるため、望ましくないと思います。
・更新する場合がある。・・・②の基準をできるだけ具体的、明確に。(別紙参考)
・契約の更新はしない。
判断基準の明示(例)
・業務量、進捗度合、経営状況
・勤務成績、能力の維持、態度、健康、その他、適正な労務提供義務履行の有無
・その他、会社の運営上支障が認められる場合 など
雇い止めの予告
・更新する旨明示している(「(自動的に)更新する」「場合がある」)場合
(「更新しない」は不要)
・1年を超えて継続雇用をしている場合
・3回以上労働契約が更新されている場合
・30日前までに予告
・30日前までに、その予告をすること不可能な場合であっても、本条の趣旨に照らし、使用者はできる限り速やかにその予告をしなければならない。(うっかりして20日前にした場合・・・有効、罰則なし)
雇い止め理由の明示(労働者の請求/契約期間満了とは別の理由/例)
・前回の契約更新時に、本契約を更新しない合意がなされていたため。
・担当していた業務が終了・中止となったため
・事業縮小のため
・業務を遂行する能力が十分でないと認められるため
・業務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたこと等勤務不良のため等
契約期間への配慮
・1回以上更新
・1年超の労働者と更新
・契約期間をできるだけ長く努める。
請求による雇い止め理由証明書の発行
上記④につき、できるだけ書面で。

 

○ 裁判で雇い止めが認められる可能性のある例
・業務内容や地位が臨時的
・期間満了にて契約が終了することを強く認識
・更新の手続きが厳格
・同様な労働者の過去の雇い

 

【 共通 】
優先される法律で決められている解雇できない事項がありますのでご注意ください。
・業務上の傷病で休業している期間及びその後30日間(労基法第19条)
・産前産後期間及びその後30日間(労基法第19条)
・国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇(労基法第3条)
・事業場の法違反を監督署に申告したことによる解雇(労基法第104条)
・結婚・妊娠・出産を理由とする解雇(均等法第9条)
・育児・介護休業及び子の看護休業を申し出又は取得したことを理由とする解雇(育児介護休業法第10,16,16条の4)
・労働組合の組合員又は加入しようとしたことを理由として解雇(労組法第7条)
・公益通報したことを理由としての解雇(公益通報者保護法第3条)
・個別労働関係紛争の援助を求めたことを理由としての解雇(個別労働紛争解決促進法第4条)
・ 解雇権の濫用(労働契約法第16,17条)

 

【 引用・参考文献等 】
●厚生労働省各種リーフレット、ホームページ
●労働新聞掲載記事
●竹内社労士事務所「是正勧告対策セミナー」レジュメ掲載様式
●その他、書籍、受講セミナー等

 

以上、平成25年4月現在の法律に基づいてまとめました。

 

以下は参考例です。

面接シート …ダウンロードはこちら→ 面接シート
労働条件通知書 …ダウンロードはこちら→ 労働条件通知書(有期雇用・無期雇用試用期間)
労働条件通知書 …ダウンロードはこちら→ 労働条件通知書「別紙」
その他 …ダウンロードはこちら→ その他(試用期間)
試用 …ダウンロードはこちら→ 試用(有期雇用)期間評価表
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